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家づくりにおける自然との折り合い

2016年10月20日[ケヤキの見える窓辺]

かって私たちは家においても自然との関わりをなくしたことはありませんでした。自然と通じることにより毎日の安息をえたり、感情を豊かにすることができました。それが私たちの生活の基本でした。

誰しも戦前を舞台にしたドラマを見る機会がありそこには昔風の住宅のたたずまいを知ることができます。また現代でも田舎に行けば昔の住宅が残っていて現在の私たちの棲む家との違いがはっきり分かります。

 

能勢の親戚の家に行ったときのことです。南側に設けられた縁側に猫が気持ちよさそうに居眠りしていました。大阪の都心とは違うひんやりとした新鮮な空気の流れを感じます。柔らかい日差しを体一杯感じ、心地よい風にのって様々な自然の香りを運んできます。縁側は高台にあり能勢の緑多い景色が眼前に開けます。日常の雑多なもろもろを忘れて真にリラックスした気分になれました。

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私たちは日本の恵まれた気候や自然と一体化した生活を長年続けてきました。私たちの身体にはそのDNAが継承されています。しかし私たちの現在の住環境はどうでしょうか?

私も大阪でも比較的田舎に住んでいますが、猫の額のような敷地で縁側をつくったりして、自然と一体化した生活を送る環境にはありません。ただリビングからは窓を閉めていても空が見えます。南側と西側の窓の上部が壁がなくガラスになっていますので。また東西に道路があって、東側道路の向こうには緑の多い公園がリニア状に設置されています。野鳥もたくさん見かけます。東西に長い敷地の西側の2階に食堂があり、そこに寝そべることができる出窓を東側に設けています。その出窓からは猫の額ではありますが最大距離をとって東側道路を介してリニアパークが広がります。出窓は座ったり、寝そべったり、花や置物を置いて楽しんだりできるように高さと広さを取っています。この出窓を通してかっては縁側で楽しんでいた自然との関わり持っています。この窓からは公園の緑を眺めたり、野鳥のさえずりに耳を澄ましたり、風や日照を調整しながら楽しんでいます。

 

私は家づくりを生業にしていますので都心の密集地に住宅を依頼されることもあります。敷地の廻りは3階建の住宅にぎっしり囲まれた猫の額のような30坪弱の角地でした。周囲には公園もありませんのでわが家のような設計では通用しません。この場合考えたのは自然を家に取り込むことです。道路に面した窓も気軽に開けることができないのでまず窓を開けて外気や採光を受けることができるようにインナーテラスというものを各居室に設けてそこから自然との関わりをもとうとしました。インナーテラスですので道路側には開閉できる窓を設けていますが普段は開閉して使用はできません。居室のインナーテラス側には掃出しの建具を設けました。インナーテラスには道路側の窓を閉じても設置したトップライトを開けて風を楽しむことができる仕掛けを設けました。各居室からインナーテラスに設けた掃出しのアルミサッシや木製の引き戸を開放しすればすべての居室が連続する仕掛けです。寝室に面したインナーテラスはその引き戸の開け具合を調整することで就寝中でもプライバシーを保ちながら外気の採り入れができるように工夫しています。

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このように私たちは家の周囲の環境に合わせて自然との関わりあいをもって生活していくのは形こそ異なりますが私たちが受け継いできた伝統的な暮らし方を守っていくことなのです。現代の住居をみてみればこのような工夫がなされていないものがほとんどになっています。これは伝統的な住居をそのまま作るのではなく、その環境に合わせて自らが自然との折り合いをどうつけていくのかが今わたしたち一人一人に問われているのです。

※写真は家内の趣味の陶芸作品

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