眉唾物?の100年住宅
2016年6月21日[ケヤキの見える窓辺]
あちこちで100年住宅と宣伝されているがちょっと冷静になって考える必要がある。設計事務所で100年住宅を宣伝しているところはない。建物の耐久性や安全性を守ることについては人一倍気を使って設計しているがそのままで100年性能を維持できるとは到底思えないので軽々しく100年住宅とは言えないことを十分承知している。
また大々的に100年住宅と宣伝しているハウスメーカーには新興企業がほとんどで会社すら100年維持できていないところがすべてである。柱にヒノキを使っていることを理由に100年住宅と宣伝しているところもあるようだがその根拠は何もないのである。われわれ日本人とってヒノキとは特別な木であることは確かだ。有名な神社仏閣の建物に昔から多く用いられてきた。また江戸時代には一般庶民の家にはヒノキ使用禁止令がでたほどであることもわかっている。スギに比べヒノキは強度が若干高いのは確かであり、その独特の香りを持って防虫効果があるとされている。
設計する立場からすれば建物の強度も耐久性もスギもヒノキも使い方次第で決まる。ヒノキを用いたからといってそれだけで建物強度が上がるわけでもない。また我が国のあちこちに残っている民家の多くは100年住宅であるがすべてヒノキが使用されているわけでもない。江戸時代など禁止令がでていることもあるかもしれないがヒノキをわざわざ使用しなくても100年住宅が実現可能であることは歴史が示している。
ついでに神社仏閣でいうと法隆寺にも屋根下地にスギ材が使われているが優に1000年は経過していることを忘れてはならない。木はその使い方さえ誤らなければ本当に耐久性のある建築材料なのです。
また100年住宅の根拠に性能表示をもって宣伝している企業もあるが、性能表示は現代のわれわれが机上で考えたもので考えられ実践されてまだ年月がたたないものを根拠にしても信用できない。現在残っている100年住宅はその性能表示もない時代に建てられて現在に至っていることを冷静に考えよう。性能表示の数値がいいからとといってわれわれの先人が残してきたものより優れているとは必ずしもいえない。
いくら耐久性にすぐれた材料を用いて家づくりがなされても現在の技術では震度7クラスの地震が複数回くればひとたまりもないことが証明された。それよりこれからは耐久性の一つに免震性能というものが大切になってくると考えます。過去からつながってきた技術や家づくりのノウハウはやはり大切に継承していかねばならないと思う。そういうことを考えると私のような一設計事務所も100年企業いや1000年企業かもと妄想に陥ってしまうのだ。
※写真は箱根を旅行した際に撮影