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在来木造工法住宅のすすめ

2016年6月14日[ケヤキの見える窓辺]

私は建築設計を生業として40年近く、独立した事務所を構えて25年になります。住宅も4階建鉄骨造、壁式鉄筋コンクリート造、ラーメン式鉄筋コンクリート造、3階建鉄筋コンクリート+木造の混構造、純粋に木造だけの住宅を手掛けてきました。量産を目標としていないため数は多くはありませんが一品一品心を籠めて設計を行ってきました。

 

現在工事中の住宅は在来木造工法で行っています。この工法は日本全国のどこにおいても採用されていてもっともバランスのとれた素晴らしい工法だと思います。ハウスメーカーの大々的な宣伝の陰にかくれて地味な存在に追いやられていますが自信をもってみなさんにおすすめできる工法です。

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意外かと思われますがこの工法について研究されている大学などの研究機関や研究者の数が全国的に多く常に切磋琢磨し新しい研究発表や耐震技術が開発されてきています。一方ハウスメーカーは派手な宣伝はしますが、しょせん一会社組織が開発し、他社との差別化なしでは生きられないので独自の工法をとっていいますがその技術情報は非公開にしています。在来軸組工法は技術情報もすべて公開され全国的なレベルで研究され、新しい技術も開発されています。

 

今回私の事務所では初めて免震装置を採用した住宅を建てていますがこれが可能になったのも免震装置を研究開発された方々がいらっしゃったからです。阪神大震災では8割近くの方々の死因が圧死だったということはよく知られています。何とか倒壊を逃れた住宅にお住まいになられている方々も次に同じ規模の地震がきたら今度は倒壊してしまうのではという不安のつぶやきは私の耳から離れません。阪神大震災は大きな揺れが一度ですみましたがこのたびの熊本地震では短期間に複数回来て最近の技術で建てられた家も大きな被害をうけてしまいました。いままでは一度だけだということで倒壊を免れた家に戻られた方も再度来た地震によって不幸にもお亡くなりになられたという痛ましいケースも起こりました。

 

今回免震装置を採用できた理由は二つです。装置の機構がシンプルで施工の手間も特別かからなくてしかも価格が非常にリーゾナブルであることです。もう一つは今回の熊本地震でその性能が確認されたからです。

 

私の事務所でも免震装置の採用は検討しましたがいずれも大がかりな装置で価格も非常に高価で採用実績も少ないし、設置の仕方も2つで済むのか4ついるのかがあいまいで信用性に乏しいと感じたからです。これなら安心できると思われた鉄骨ベースを用いた免震装置は技術的には納得できたのですが価格的には工事費が1.5倍にもなるということで到底採用できる代物ではありませんでした。

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ハウスメーカーは大々的に宣伝を行って自社の技術の優位性を唱えますが所詮一社内のもので技術情報は非公開で全国レベルで様々な研究者や研究機関の研究や評価や開発などを行う在来軸組工法と比較してもその信頼性は比べものになりません。

 

在来工法は施工者も数多く施工者の技術レベルのばらつきはあることは否めませんがしっかりした技術・知識をお持ちになっている工務店や設計事務所が数多く存在していることを忘れないでいただきたい。

 

木を主要材料に用い環境にも配慮でき、技術も公開され、新しい自然災害に遭遇して新たな課題を突き付けられても全国レベルで研究・評価・技術開発を行って課題克服に挑戦していける体制をもつこの工法はみんなで守って行かねばならない私たちの大切な財産だと思います。

※写真は金井の作品

 

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