長期優良住宅について
2015年5月29日[ケヤキの見える窓辺]
長期優良住宅というネーミングは住まいづくりをお考えになっている方々には魅力的に響く。
その理由は以下の優遇措置が付与されていることもその一因に挙げられる。
①固定資産税の減税+2年間期間延長
②ローン控除
③地震の保険料の減額
④エコ住宅ポイント申請
ただ申請する手間が余分にかかる(たとえば30万円程度は必要とするらしい)。また工事費もそれなりにアップ(根拠は定かではないが2割アップするという説もある)するといわれている。
私も家づくりに携わってきたが長期優良住宅を設計に採用したことは一度もない。その理由はいろいろとあるが、長期間に渡って性能を維持していくためにはそれなりの費用を覚悟しなければならないはずだがそのあたりがはっきり読めない。地震や台風に遭遇したあとは臨時点検が必要。築後10年ごとに点検を実施することとあるがどのような点検をすればよいかはっきりしない。専門家による検査が必要と思われるが単なる外観調査だけでは済まない内容である。長期優良住宅という以上、長期にわたって住まいの品質を保持していくのがその目的であるのでどのような点検をするかについてはきちんとした基準を設けなければならないはずだが現状ではない。
建てる時点での書類審査は厳しくてもそれを担保する現場確認(私たち設計事務所の言葉でいうと工事監理)についてはあいまいだ。どんなに立派な書類があってもその書類に記載されている性能を担保する現場確認についてはあいまいだ。
長期優良住宅はそのネーミングで一般消費者を引き付けるが工事中の現場確認や築後のきちんとしたメンテ(当然相応の費用が発生する)ができてはじめて成立することに注意が必要だ。
この点をあいまいな状態のままで、長期優良住宅という言葉だけが先走りして、様々な優遇措置をちらつかせながら消費者を誘い込む手法に私たち設計・監理を生業としているものにとって、おいそれと一般消費者におすすめできるものではないのだ。
瑕疵担保保険が導入されてからも欠陥住宅はあとを絶たない。それは全ての新築住宅が保険付きであるにも関わらず、相変わらず杜撰な設計ときちんとした現場確認がなされていないことに大きな原因がある。
※写真は家内の趣味の陶芸作品。