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建材とイミテーション

2017年3月25日[ケヤキの見える窓辺]

『1972年にロサンゼルス郡当局は、こう宣言した。大気汚染のもとでは自然木は枯死するだろうし、このほうが「維持」もでき、枯死よりは「魅力的」だというのがその立案根拠であった。しかし、人々は、施策の必要性を理解しつつも、やはり「躊躇」した。どこから見ても自然木と寸分違わぬ「プラスチックでできた樹木」を市内に設置すると人々はなぜ躊躇するのだろうか。造花や人工樹林に対して、いくばくかの「躊躇」を感じるとしたら、そこには、自然の草木の方が「善」に決まっているという倫理的フレームがあるからだ。』という内容のブログを以前書いたことがある。これは樹木についてであるが建築に使われる建材についてはどうだろう。

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以前東京の設計事務所に勤務していたときある保養施設を担当することになったが客室が和室の場合内装制限がかかり天井に自然の木製品は使えないので石膏ボードに木目を印刷したシートを貼った材料を使用するのが常であったが違和感を禁じ得なかった。見た目は木の天井材に見えるがよく見ると木目が全て同じである。自然材料ではありえないことでこのことに違和感を感じたのだ。

 

いまマンションのリフォームを実施中だがイミテーション材料を使っている。ご存じのように賃貸マンションの住戸は壁や天井はビニルクロス仕上げがほとんどでいかにも殺風景な感じがする。これに一石を投じるつもりでビニルクロス仕上げの天井に自然を感じるアクセントとして梁を設置した。構造的には全く必要がないのでいわゆるイミテーションである。しかも天井に設置するので安全性にも配慮しておかねばならない。2間の長さの梁は木材そのものでもかなり重量がある。持ち上げて行う取り付け工事も大変でしっかりRC躯体に止めておかねばならない。こういうこともあり木板を張って軽くした中が空洞の箱状にして梁に見せたイミテーションを使った。材料は本物の木で自然の仕上げ塗装を施していて一見本物の梁材に見える。自然の板材を使っているので木目も材料毎に違っているのでそれ自体の以前感じた違和感はない。

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テーマパークなどでは本物に見せたイミテーションがほとんどであるが人間が暮らすマンション住戸にイミテーションものを使用するのは設計者としてやはり「躊躇」してしまうが直に手で触ることもない天井に設置すること、構成材も本物の自然材料を使っていること、塗装も自然塗装を使っていることなどで、ビニルクロスで囲まれた殺風景な室内風景よりも天井にイミテーションではあるが本物の材料で造られた梁があり、そこで暮らす方がアットホームな感じになり、より快適な気持ちになって暮らしていただく方が設計者としても楽しい気持ちになる。

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※ 写真は 関宿の風景

 

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