リフォーム工事の勧誘には油断大敵!
2016年8月26日[ケヤキの見える窓辺]
リフォーム工事に関わるトラブルが増えている。許せないのはいわゆる悪徳リフォーム業者の存在だ。ターゲットは高齢者であったり、独居人や女性などいわゆる弱者だ。言葉巧みに「シロアリが発生している」、「構造補強しないと地震でつぶれる」、「雨漏り跡があるのでいますぐ処置しないと柱や梁が腐って家がつぶれる」——などということで(必要でない)リフォーム工事を行い工事代金をかすめ取るケースがあとを絶たない。
先日調査依頼があった案件では耐震補強という名目で業者が行った工事が専門家の目から見るとまったく効果のないものであり、しかもその工事により家の耐久性が悪化するしろものだった。耐震補強という名目で工事を計画する場合、通常は現状の家の耐震性能を確認する調査を行いその性能に応じて目標とする耐震性能を決めて改修工事を計画する。
悪徳業者の場合は専門知識が必要で手間のかかる現状調査は実施しないで(できないので)すぐに改修工事にとりかかる。家全体の耐震性能向上設計は実施してないのでほとんどが耐震上まったく意味のない工事になる。具体的にいうと木造住宅の場合、小屋梁と小屋束とはかすがいなど簡単な金物で固定することが決められているがこの現場ではこれほど大きな固定金物が必要か?というぐらい大きな金物が各小屋束ごとに取り付けられていた。
しかもある小屋梁にはアラミド繊維を巻きつけたり、意味不明な接着剤が塗られたりしていた。確かにアラミド繊維を巻かれた小屋梁の強度自体は向上していると思うがこの小屋梁だけを高価なアラミド繊維で補強する意味が分からない。想像だが小屋梁に経年によるひび割れが発生していたのを見つけそれを補強するという口実で処置したのではないか。専門家が見ればひび割れが発生していても強度に影響しないかどうかは判断できる。
また建物基礎も補強?工事が行われていた。通常建物全体の耐震改修設計を実施したうえで必要であれば基礎補強を行う。筋交いや合板による耐力壁直下には鉄筋入りのコンクリート基礎が必要です。このケースの場合は一番大切な耐震改修がなされず、既存基礎の廻りを一応配筋入りの基礎をめぐらしている。家全体の耐久性も配慮されずもとあった換気口まで塞いでしまって現状では2か所の床下換気口があるだけである。これでは必要な床下換気が損なわれてしまい明らかに建築基準法に違反している。
このように不必要なリフォーム工事をさせられて工事代金をだましとられるケースもあり、どこかで建築士などの専門家の介在があったなら防げたケースがほとんどである。建築士も業者側についているものは業者の利益を代弁しているだけで真に消費者側に立った判断をする建築士は少ないのではないだろうか。
※写真は上下呂温泉の旅館、その他は郡上八幡の風景