大阪北部地震について考える
2018年7月3日[ケヤキの見える窓辺]
大阪に震度6弱の地震が発生した。1920年代の初めに観測開始以来の大きな地震であった。大阪市内にいて仕事中であったが突然下から突き上げるような揺れを感じた。阪神大震災以来の揺れであった。
家づくりにおいては耐震性については最低限の基準が建築基準法等に規定されている。この規定は最低限の規定であるということは忘れがちです。熊本地震のように大きな地震が複数回くることは前提とされていないし、津波対策などまったく入っていない。私も家づくりのお手伝いを生業としているので地震対策等については慎重に検討する。津波については今の所、津波被害を受けない地域を選択するしか対策はない。
こんな中でも私たち人間は努力して力を併せて対地震対策技術を日々進化させている。私が住宅で経験したきた構造は鉄骨造、RC造(壁式、ラーメン式)、木造軸組造などがあり、その中でもやはり木造軸組造が多い。これは皆さんがご存じのように再生可能材料で造られていること、独自の工法のハウスメーカー以外の全国の大学の研究者、設計事務所、工務店などが協力して技術を公開して開発していること、我が国では長い伝統の上に立った信頼できる工法であることなどが挙げられる。一方ハウスメーカーの工法は技術情報が一般に公開されていないブラックボックス技術である。そのためリフォームするにも一般の設計事務所や工務店に依頼できずハウスメーカーに依頼するしかない。
私もハウスメーカーで造られた家に住まわれている方に改修の相談を受けることがあるがすべてお断りしている。理由は先に挙げた点からである。ハウスメーカーは独自に高性能の外壁材や設備などを開発してそれらを使用することが前提となっている一方在来工法は外壁材や設備についてはフリーである。ハウスメーカーで使われているのと同等のものも使うことができるがその他のものも個々の事情に合わせて選択できる。
大型の実験装置を使って大震度の揺れに複数回耐えたと大々的に宣伝するハウスメーカーもあるがあくまでも複数回の大震度に耐えられるモデルハウスを使用しただけで個々の家が耐えたのではないことを冷静に考えるべきである。在来工法でも複数回の大震度の地震に耐えられるモデルハウスは造れるはずである。
在来工法でも熊本地震以来複数回の大震度の地震に耐えられるような家づくりを目指すことが求められている。一つは地震の揺れに抵抗する方法ではなく建物にかかる地震の揺れを低減する方法が開発されてきている。震度3程度の揺れならほとんど家が日常複数回経験してもほとんど被害を受けないことはわれわれは知っている。それなら大震度を低減できれば被害をほとんど皆無の状態に抑えられるということです。以前はこのような装置をつけようものなら工事費が5割以上アップするということでほとんどの家では設置できなかったが最近ではほとんどの家でも使える安価な装置が開発されてきている。私も2年ほど前にこの装置を設置した住宅を完成させている。
また大阪北部地震についてはブロック塀などの附属物によって尊い幼い命が失われた。このような附属物でも通学路などに接して築造されたものは最大の安全性を担保したものにしなければならないことは私たちに突き付けられた課題である。
※ 写真は有馬温泉の風景