モデルハウスについて考える
2017年3月7日[ケヤキの見える窓辺]
マイホームを計画されている方なら一度はハウスメーカーの住宅展示場を訪れた経験はあると思います。豪華な家具や充実した設備、きらびやかなインテリア商品が設置されています。廊下の幅なども通常のものより広く取られています。提示された販売価格には家具類、カーテンその他インテリア商品はその価格から省かれています。置かれているキッチンも通常のものよりグレードアップされたものが設置されています。またどれだけ優れた省エネ性能があるかや、メーカー独自に開発された外壁材などに目を奪われてしまいます。
さて家づくりにとって大切なものは何でしょうか?豪華な家具やきらびやかなインテリアでしょうか?最新式の機能のついたキッチンでしょうか?
豪華な家具やきれいで便利な設備などはこの家に自ら暮らしていくその生き方にそぐわないなら必要のないモノです。実際は予算の制限、敷地の条件などがあり、これらの諸条件の中で自らの生き方に合った家を実現することが大切なことだと思います。家の周囲の環境はどれ一つ同じものはない。そんな中で自らの生き方にとって大切なことは何かを考え取捨選択を繰り返しながら実現にこぎつけていく過程が家づくりにおいて最も大切なことではないだろうか?環境や予算などの拘束の中で100%満足することは不可能なのはわかり切ったことではあるがそれでもより良いものを目指して努力していくことが大切なことではないだろうか?家づくりの過程そのものが自らの生き方そのものなのだと思う。
このような観点からモデルハウスを眺めると、自らの生き方にそった家づくりの過程を経ないでいきなりモノが提示され、モノの豪華さ、便利さ、省エネ性能や綺麗さだけを尺度にしたものになっている。ハウスメーカーでの打ち合わせは自らの生き方にかなう家づくりというもっとも手間がかかる困難な観点を離れて先ほど述べた尺度をもとに進められているのではないだろうか?その尺度は目に見え、数字で表現しやすいという特長があり、事業者側からは物事を進めて行く上での手間のかからない便利な尺度なのだ。私たちの生き方は決して数字で表したり、視覚的に表現できるものすべてではない。大切な部分はほとんどが数字で表したり、単に視角的に表現できるものではない。本当の家づくりの難しさはこの点にあると思う。
私たちの存在は何世代にもわたって命の継承を経てここにあるものでその継承の過程で先人たちの生き方のDNAも継承されてきている。もちろん家づくりにおいても我が国の風土や文化の影響も受け長い年月をかけて洗練され、継承されてきた。私たちの暮らしや生き方もやはりこの原点をもとに形作られているのではないだろうか?
私たちの役目はこのような家づくりの過程を通していままで磨いてきた専門的な知識や技量、経験などを動員してマイホーム実現のためのサポートを行うことだと思う。
※写真は海津大崎の春風景