床勾配について考える
2016年12月24日[ケヤキの見える窓辺]
以前駅の緩勾配をつけたホームで老人が転落事故に遭われ事故死した例があった。付添いの人と車いすの女性が、エレベーター降り口からホームへ出て、付添いの人が手を離した際に事故が起きた。ホームには転落防止柵は設けられていなかった。
このホームの勾配は2.5%であった。この電鉄会社の転落防止柵を設けていない54駅を調査したところ、7駅が2%を超えていたという。国土省の「公共交通機関の旅客施設に関する移動など円滑化整備ガイドライン」によると、ホームなどの排水のために1%の横断勾配をつけることが標準となっている。ただしやむを得ない場合はこの限りではないとされている。
私たち建築設計に携わる者にとって床勾配は重要である。床勾配が緩いとすぐに雨水が溜まる。道路を歩いていて排水勾配がとれていない車道の水たまりで車に水をはねられて体にかかり不快な思いをした経験は多くの人がされていると思う。また大きな広場たとえば建物のエントランスなどアスファルト舗装されているところも多いが雨の日に水たまりがあちこち発生しているのを目にした人も多いでしょう。また屋根勾配など十分でない場合はやはり水たまりができ雨漏りの原因となるので要注意です。
バリアフリーで決められているスロープの基準は屋内では1/12、屋外では1/15以下が基準になっている。ちなみに1/12は約8.3%、1/15は約6.6%となっています。
最近住宅内の床の勾配でトラブルが発生することが多くなっている。丁寧な工事をされている職人さんは少なくないが、いい加減な業者も増えているように思う。たかが床勾配と思われるが人によってはめまいや体調不良の原因となる場合もあり、長時間滞在する家は油断できない。
以前相談を受けた案件では床が傾いているのを感じ毎日めまいを起こしているということで調査してみると目視で見ても傾いていることがわかり、業者さんに手直し工事をしてもらったことがある。床を水平にできれば理想だが人間がやる以上施工誤差というものがありある程度は許容されている。それと人間の感覚の許容限度を加味されて6/1000の勾配が常識的な床勾配の限度とされているようだ。
さきの駅のホームの床勾配ではあまり緩すぎると風の日は雨がホームに吹き込んでくるので水たまりができかえって利用者に迷惑な場合もあり、安全性とのせめぎあいの中で安全柵を設けるなどしていく必要がある。視力障害の方や健常な人でも泥酔してホームに転落する事故も後をたたないので社会施設整備の重要施策として進めて行かなければならない。
※写真はUSJの風景