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使い捨て可能な昼光照明を利用する

2014年11月3日[ケヤキの見える窓辺]

電灯照明は、発電所に化石燃料を投入し、発生した蒸気でタービンを回し、それから得られる電力を使って成り立っている。この照明システムは、貴重な化石燃料を発電所に投入し、排熱・廃物を大気や海水に捨てて成り立っているから、電灯照明をどんどん使って化石燃料を使い捨てにしてもよいというわけにはいかない。

会議室 採光1

 

使い捨てを維持するためには、原料資源とそれを製品に仕上げるための燃料資源を常に投入し続ける必要があり、それとともに生産過程で生じた廃物と排熱を捨てられるだけの環境が同じように必要である。使い捨てがさまざまな社会的弊害を生み出していることが少しずつあらわになり始めたので、われわれは使い捨てに対する抵抗感をすこしはもつようになってきている。その結果リサイクルを行おうとする気運が高まっているが、本音は使い捨てを続けたのではないか。

 

太陽光(天然照明)を昼間の照明に用いるものを昼光照明と呼ぶが、昼光照明もまた光としての太陽エネルギーを使い捨てにする照明方法である。なぜならわれわれが昼光照明として利用した光は、最終的にどこかに吸収され、すべて熱になって環境に捨てられるからである。地球はこの熱を大気と水の循環によって宇宙に捨てることができる機能をもっているから、昼光照明は太陽からの光を使い捨てにしても何ら問題のない照明方法である。

 

同じように月明かりも月面で反射した太陽からの光が地球に到達して行われるので使い捨て可能な夜間の照明方法である。

 

電気照明などの人工照明が発明される以前は住居などへの天然光の取り扱いの工夫が我が国独自の豊かな生活文化として発展してきた。しかし、現代では人工照明が発達して機械で便利に扱えるようになったことがかえって伝統的な豊かさを喪失することになった。機械を扱うようになるとそれにふりまわされて、純粋無垢な心が失われてしまい、人間本来の素晴らしいありかたとはかけ離れ、物質的にははるかに豊かになっているにも関わらず、かえって精神的に豊かさを失ってきているのではないだろうか。

管理職 採光2

 

窓に設けた仕掛けを使って、はるか彼方から届く太陽光を巧みに利用した昼光照明は、窓に降り注ぐ光をそのまま使い捨てにすることができ、無理にリサイクルなど必要の無い素敵な照明方法である。光の採り入れ方は通常の窓からの測光(サイドライト)、壁の上方からの頂測光(ハイサイドライト)、天井面からの頂光(トップライト)や地面や水面から採光する底光(ローサイドライト)などが基本であるが光も直接光、拡散光、反射光などを土や樹木、水、雪などの自然物や障子などや時間の移ろいなども利用してわが国では古来からそれぞれ地域の環境に合った豊かな生活を享受してきた。

また光は熱源でもあるのでわが国では冬期の採暖にも巧みに利用してきた。夜間は夜間で柔らかな月明かりを享受する文化が発展した。

※写真上はサイドライトとトップライト(拡散光)を採り入れた工場の会議室、写真下は柔らかサイドライトを採り入れた工場の幹部室

 

 

 

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