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体感を大切にする家づくり

2017年9月23日[ケヤキの見える窓辺]

体感について考えるには具体例をあげるとよい。中日に山本昌という大投手がいた。首位打者をとったことがあるロッテの角中勝也選手は山本投手相手に打席に立つときは「150キロくらいをイメージした」という。ご存じのように山本投手は剛速球投手ではない。急速も133キロ程度だ。それなのに山本投手の球速は150キロに感じてしまう。これが体感なのだ。逆にいま注目の大谷投手の160キロの投球も意外とバットに当てられて三振は少ない。体感の球速は140キロ後半ぐらいといわれている。それでも大したものだが。

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世の中には客観的、科学的でもっともらしいスピードガン的数値があふれているがそれにだまされないためには自分の感覚を磨き信じることが大切だ。

 

逆に感覚ばかりが優先されてもいけない。有名な話に人間にとって一番恐ろしい生物は?と問われてもそれは「蚊」であることは統計数字をみないと納得できない。年間サメにかまれて死亡する人は世界で10人ほど、逆に蚊にかまれて死ぬ人は72万人もいる。ご存じのように蚊の怖さはマラリアの原虫を媒介することだ。血を吸うときに蚊が分泌するだ液の中にいる原虫が人間に感染してしまうからである。

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さて家づくりに話をもどすと「省エネ性能」、「断熱性能」「気密性」、「耐震性」など数値で表現される指標がある。それらに振り回された家づくりがハウスメーカーと中心に行われている。家の省エネ性能一つとってもそれを計算するにはある仮定の生活を想定するしかだせない。個々の生活はそれぞれ異なるのに。個々の生活に応じてエネルギーの使い方も千差万別なのに。本当は完成した家に住んでからの計測値をもとにどれだけの省エネ性能があるかという方法しかないのに家を売りこむために架空のデータを提示して営業しているのだ。省エネ性能を上げるためには断熱性能を上げないといけないがそのためには一般に行われているのは開口部や外壁の気密性を上げることがもっとも効果的だ。この流れの中での家づくりには根本的に大きな欠陥がある。それは住み心地や私たちが先祖から継承してきたわが国固有の自然観や生き方が完全に無視されている。それは私たちの体感を重視した家づくりであった。私たちの体感はその生き方とともに磨かれていく感性をもとに得られるがその感性を磨くという大切な観点が欠落した家づくりが横行している。

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私たちは自然豊かなすばらしい国土に生を受けている。古来から受け継がれてきた生き方を継承する過程でその感性を磨いて他国とは異なる独自の文化を育んできたと思う。私たちが受け継いできた文化や美徳などが崩れてきていると危機感を抱く人も多くなっている。その原因の一つにやはりいまの家づくりにあると思う。家は子供を産み育てるという生の伝承を行う大切な場でもある。

※写真は京都の秋風景

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