たかがエアコンされどエアコン
2016年12月17日[ケヤキの見える窓辺]
一般の庶民住宅では空調機に市販のエアコンを使う場合がほとんどである。しかし現在の技術では熱交換のために室外に外調機が必要で、さらに室内機とは冷媒管で結ばれ室内機での熱交換のさいにでる結露水を室外に排出する必要がある。ポンプ付きの冷媒管に比べドレイン管の一般品はポンプ付きでないために重力により排出しなければならない。
都心部では一般の庶民住宅は30坪前後の敷地に建てられることが多いがエアコンの外調機の置き場に苦労することが多い。隣地とのあきは50cm前後になることが多く外調機からの熱風や冷風や音の仕舞で近隣とのトラブルも抱えることもある。
一般のエアコンなしで空調しようとするなら某ハウスメーカーのようにダクトで温風や冷風を送り、全館空調と称して快適な人工環境を確保することも考えられるが都心部の斜線や高度の制限の中で十分な階高が取れないこと、また多額の費用が必要なため、さらにメインの空調機を置くスペースもかなり必要でこの方式は採用できない場合が多い。それよりは費用も安く居室の必要な天井高を望まれることが多いためである。
たかがエアコンとはいえ外壁にはクーラースリーブという75φ程度の穴を開けねばならない。構造用合板などで耐力壁を設けるところにはなるだけ穴を開けたくないのは当然です。
開口の位置も制限があるので要注意。また筋交いで構成される耐力壁も注意が必要です。最近中古住宅で相談を受ける案件にクーラースリーブが筋交いを貫通していることがある。
新築住宅でも壁のボード張が終わったあとで穴を開けるので誤って筋交いを貫通する危険もあります。きちんと監理者がついた現場などは安心できますが、建売住宅のように完成品を購入される場合はそのあたりがブラックボックスになる場合が多い。監理者がついている場合でも設備業者が耐力壁とは知らず穴あけをしてしまうこともあり、私も手直しを指示したこともある。
またドレインのルートでも苦労することがある。大きな家で外部に面した部分は全て開口でしかも縁側付きの居室の場合は外部と反対側の位置にエアコンの室内機を設置する場合もあり、結露水を床下に貯めるわけにはいかず家の外側に出さざるを得ないのでルート確保するのに一苦労する。また新築住宅でも外部の開口部の両側は耐力壁で開口部はシャッター付の場合などクーラースリーブを開けることができないので室内機を外壁側に設置できない場合も多い。そのときは近くの陸屋根に外調機を置いたりするのだがドレインの確保に苦しむ。最後はポンプアップして外調機置き場にまでもってくる場合もある。
建築家によってはたかがエアコンといってエアコンの設置を考えずに引き渡す場合もあると聞きます。苦労のわりには美しい建物にならないというのがその理由である。敷地に余裕がある場合や予算が十分な場合を除けば庶民はやはりされどエアコンということで厳しい夏場や冬場は手放せない。
※写真は足摺岬灯台