やはり気になる昨今の音環境
2014年9月6日[ケヤキの見える窓辺]
私たちの住まいの辺りや街に聴く四季折々の音は色濃く人々の普段の生活を彩り、生活の
しかし、私たを取り巻く都市の自然環境はこれまでの住まい方を持続できないほどに変化した。アルミ建具や住宅設備機器の氾濫とともに、かつて見ることができなかったほどの密閉型の住宅をつくり、それは海辺や山間の地域まで浸透しきっている。さらに拍車をかけているのが高気密・高断熱を売り物にする住宅の氾濫である。
歴史を振り返ってみれば、が国では人々が自然と住空間の融合、一体化にいかに努力してきたかがわかる。そしてわれわれの耳にふさわしい音の響きを運びながら独特の音の世界をつくってきた。
人間の聞きうる音の高低の限界は、通常20Hz~20000Hzであるといわれている。しかし、これまで人間の耳に聞こえないとされてきた20000Hzを超える超高音が欠けると生理的な不安感の原因となり、とくに鉄筋コンクリート住宅や超高層住宅でその傾向が著しい。超高域の音は音として明確に聞こえなくても、脳波の変化などから明らかに生理的な効果をもつことを裏付け、住宅の音環境の重要さを指摘する研究成果も発表されている。
脳波は平安で快感のあるとき低い周波数の波が増え、逆にイライラした不快時には高い周波数の波が増える。20000Hz以上の高音を含む音を聞かせた場合、脳波の周波数分布が高い方から低い方へ写り、快感を得ていることがしめされている。
住宅の内外で、音環境を測定した結果、騒がしくはないが、唐物の声や木のざわめきなど「暗騒音」が豊かなインドネシアのバリ島や南インドでは30000Hzまで極めて周波数範囲の広い音にあふれている。また我が国の下町では、屋外にやはり低音から高音までの、まんべんなく音が広がっている、木造の平屋屋内でも音の大きさが下がるだけで、周波数分布は広がっている。
かつて自殺者があとをたたなかった人口環境の茨城県つくば市では市の公務員宿舎では昼の屋外でも10000Hz以上の音がほとんどゼロ。10階建ての鉄筋コンクリート住宅の室内ではどの周波数のおとも検出できないほどの“無音”状態であったことが知られている。
鉄筋コンクリート住宅の場合、どこの場所でも遮音効果は高く、20000Hz以上の音が完全に遮断されていた。
高気密で省エネ効果が高いところだけを強調されていて一般の消費者は考えることがないかも知れないが、わが国でわれわれが先祖から引き継いできた豊かな感性が文明の利器によって損なわれる恐れがあることも知るべきである。
※写真は鎌倉の風景