人の心を開くには自然がポイント
2014年8月30日[ケヤキの見える窓辺]
近年の住宅環境は年々悪化している。昔の縁側のように家の一部でありながら外部の自然と通じて人どおしが心を開いて会話する状況は困難になってきている。しかし近年の防水技術の発展で家の屋上にテラスをつくることが容易になってきた。
「見上げれば空という開放感」が家族や招待客の心を開き会話を弾ませる。居室内ではせっかくついている窓を開けて気軽に外を見ることも、そよ風を肌で感じるのは難しくなっている。一方屋上ではうまく設計すれば他からの目線を気にしないで風を体いっぱいに受けることも、部屋の中では見ることができない夕日も眺めることができる。家の中で唯一自然に直接触れることができる場となり得る。
十分広い敷地でないとせっかく庭を作っても十分な開放感は味わえるものはなかなかつくれないことは現代人は感じていることだと思う。
住宅密集地ではそれでも屋上テラスを設けての開放感は得ることは困難な場合が多い。せっかく多額の費用をかけて屋上テラスを設けても周囲環境との関係で心が開けるほどの開放感は得られない場合がある。そんなとき私が勧めるものにインナーテラスがある。屋根も窓もある閉鎖空間であるにも拘らず仕掛け次第では静かな開放感を味わうこともできる。光、風の採り方、内部仕上げテクスチャーに配慮する—自然材を用いて香りにも配慮するなどして他からの視線を気にせず静かな開放感を楽しむこともできる。
私たちが心を開くのはやはり自然がポイントだと思う。それは昔からわれわれのDNAに組み込まれているものなのだ。
※写真は京都和束の風景