デザイナーズハウスには気をつけろ!
2014年7月28日[ケヤキの見える窓辺]
デザイナーズハウスというと一般消費者はどういうイメージをもたれているのでしょうか。
建築専門雑誌に掲載された家、一般のコマーシャル雑誌に掲載された家、建築学会賞など受賞歴がある建築家が設計した家、自称建築家と名乗る建築士が設計した家・・・など。
しかし、一般にデザイナーズハウスといわれているものに関するトラブルが跡を絶たない。私は偶数月の第三土曜日に仲間と大阪駅前のグランドフロント大阪のLIXILショウルームで一般消費者相手の相談会を行っている。そのときに実際に相談された事例や仲間から聞き知った情報などデザイナーズハウスに関するトラブルが多いことを知った。
中古のデザイナーズハウスを購入したが暮らしてみてとうてい日常の暮らしができないとわかりどうしたらいいのだろうかとかデザイナーにたのんで家を新築したが、風漏れや雨漏りがひどく生活していくにはどう改修したらいいのか困惑しているなど。
一般の消費者は雑誌に掲載された家やその設計者である建築家が手掛けた家に対してもたれるイメージと実際に建てられた家はそのイメージ通りになっていない場合が多い。また雑誌に掲載された家=自分がイメージした優れた家、有名建築家設計の家=自分がイメージする優れた家 なる等式は必ずしも成立しないことが多い。
有名な建築家が設計した建物は雨漏りなどするはずがないと一般には思われがちだが、私の恩師は建築学会の会長を務められたが「建築学会賞をもらった建物で雨漏りをしない建物はない」と建築の授業で言われたことを思い出す。
またある有名な建築家は打ち放しコンクリート仕上げが大好きで住宅においても実践されている。一般の消費者もそのデザインに興味をもたれることも多いと思う。そしてそんな家にあこがれる方もいらっしゃるのは否定できない事実である。この建築家の手になるある有名なファッションデザイナイーの自宅がテレビで紹介されていた。季節は冬だと思ったが家の中なのに熱い毛皮の服を着られて登場した。ファッションデザイナーだから毛皮の服を着たのではない。要は毛皮のような厚手の服を着なければ寒くて暮らしていけないからだと私たち専門家は理解するが一般の消費者はどう思われたのだろうか。
打ち放しコンクリートの仕上げを家の内部でも実現するために断熱という考え方を捨てて実現したのだ。日本の冬は断熱なしでは寒くて暮らせないのは承知のことである。断熱をすれば室内の打ち放しコンクリートの表現はできない。これがこの建築家の考えでこのファッションデザイナイーもそれを承知で設計してもらっているのでトラブルはないのだ。
しかしこの事情を理解しないまま、有名建築家の設計というだけで一般の消費者が中古住宅を手に入れたらどのようなトラブルになるかもうお分かりになるでしょう。
住み心地を犠牲にしないでデザインにも優れた名建築は少ないのだ。そんな家なら誰も手放したりはしないだろう。
日本の冬は厳しく、寒さに耐えながら白い息を吐きながら我慢して住むのは、それを設計した建築家だけでよい。一般の消費者には厳しすぎると思う。
このようなトラブルの根底には自分の求めている良いバッグとはどんなバッグかの価値基準をはっきりさせないまま安易にブランド品に飛びつく消費者心理があるのではないか。
自分にとって良い家に出会うとは住まいや家族、人生について自らの価値基準をはっきり認識し、それを実現できる家に出会うことだと思う。
※写真は家内の陶芸の作品