今年は花粉症が話題にならないが
2021年5月10日[ケヤキの見える窓辺]
いま街角ではマスク姿の人をよく見かける。それはコロナ対策であることはみな知っている。例年この時期より数か月前は「花粉症」が話題になるが今年は静だ。私もこの歳になって花粉症に少し悩まされるようになった。コロナに関わらず、外部から花粉が侵入するのでそれを避けるためわが家の窓はほとんど閉め切っていた。
昔から日本人は春が来るのを心待ちにしていたが、今ではそうでない人も多くなった。花粉症で苦しむ人が増加したからだ。日本人の四人に一人が花粉症にかかっている。
多くの人が指摘するように昔はこんなに花粉症で苦しむ人の数は少なかった。
日本で初めてスギ花粉症の患者が見つかったのは1963年、日光市の患者であった。
日光の杉並木は十七世紀から植林されていて、昔からスギ花粉が飛散していたにもかかわらず、昔の日本人がスギ花粉症にならなかったのはなぜだろうか。
花粉症をはじめとするアレルギー性疾患は免疫細胞のバランスがくずれた結果、肥満細胞が破裂し、ヒスタミンなどの化学物質が鼻や目の粘膜を刺激して起こることが知られている。免疫細胞の六割が小腸に存在し、大腸と連携して免疫のバランスを調整している。腸内環境が悪いとバランスが崩れ、アレルギー症状が出やすくなる。
昔と違うのはわれわれが自分の体を必要以上に大切にしすぎていることだ。ちょっと熱を出しただけでも抗生物質を服用するようになった。また食中毒の恐れから、食品には防腐剤や食品添加物を含むものが増えてきている。抗生物質を服用しすぎたり、防腐剤や食品添加物を含む食品ばかり食べたりしていると腸内細菌のバランスが崩れてアレルギー症状が出やすくなる。
最近では、腸内の環境を整える細菌としてビフィズス菌や乳酸菌が注目されてきた。そしてそれらを含むヨーグルトをとると花粉症を予防できることもわかってきた。
市販のヨーグルトには実に多くの種類の乳酸菌が含まれている。しかし、興味深いのは花粉症の抑制に効果のある乳酸菌の種類は人によって異なることだ。花粉症の症状を抑えるには自分の体質に合ったヨーグルトを選ぶことが大切になるらしい。
昔と異なり、寄生虫をはじめとする細菌やウィルスなどの微生物を一方的に追放している「超清潔社会」が花粉症をはじめとするアレルギー性疾患に関係しているのは確かだ、と人間総合科学大学の藤田紘一郎さんは述べられている。コロナ下ではあるがよりいっそう「超清潔社会」は進行している。花粉症を患っている方はどのように過ごされているのかお話を伺いたいと思う。