家づくりにおける自然との間合い
2018年11月24日[ケヤキの見える窓辺]
人間がこの地球で他の生物と共存して生きていくためには自然との間合いは大切だ。この四季のあるわが国では四季を感じて暮らすことは日々の暮らしをより豊かにすることはみな知っている。それは私たちが受け継いできた文化や生活の知恵などをみればわかる。
しかし最近の家づくりをみるとこの大切なポイントを見落とした性能ばかりが目立つ家が量産されている。自然との間合いをまったく考慮せずに性能アップに終始した家づくりが横行していて消費者を混乱させている。
この自然との間合いは非常に重要だ。とくに子供を育てていく過程では大切で自然との間合いは体で会得していかなければならない。この自然との間合いを会得していない子供たちが増えているという識者の危惧を訴える声がある。
自然との間合いを意識して家づくりをしないとバランスの悪い性能だけが突出した家になる。わたしたちは家の性能がアップすればするほど自然からの距離が遠くなることは理解できる。たとえば窓はどんどん性能アップして断熱性能も気密性能もアップしたが同時にそれは自然を遮断することにより成し遂げられる。以前の性能の悪い窓では野鳥のさえずりや風によってそよぐ木葉の音なども入ってきて外部自然との距離感は短かった。暑さ寒さは体にはこたえるが四季のあるわが国では暮らし方に大きな影響を与えてきたが性能アップした窓からは逆に受ける影響が少なくなった。
タワーマンションは高性能窓サッシが開発されてどんどんと増加している。売れるから建てるという論理で造られているがそこで育てられる子供への影響について真剣に広陵されているかはなはだ疑問だ。確かに景色は素晴らしいと思うが、自然の山から見る環境とはまるで違う事を知っておかねばならない。そこには新鮮な空気や風、光や自然の匂いなどが周囲の自然環境の中で適度に濾過された上で私たちに降り注ぐ。私たちはそれらを受けながら眺めているのだ。それは私たちが以前から受け継がれてきたものと何ら変わらない
タワーマンションのようにサッシなど確かに高性能化したが風圧や気密性能を上げ、断熱性を維持するために非常に重たくなっている。気軽に開け閉めできた性能の悪い窓とは異なることも要注意。影響は弱者になるほど大きいことは歴史的に知られていることである。
せっかく四季のある豊かな気候の国に住まわせてもらっている私たちは伝統的に自然との間合いを大切にした家づくりを受け継いできた。家づくりのお手伝いを生業としている私は昔から受け継がれてきたこのやり方が私たちには一番だと考えている。これは文明の進む道に抗うことはできないがそれを考慮するかしないかはやはり大きな違いだと思う。
※ 写真は家内の陶芸作品