暮らし方と自然との付き合い方—家づくりを通して
2018年10月31日[お知らせ]
家の設計を生業にしている私にとって人の暮らし方や人が自然とどう付き合うのかがいつも気になっている。クライアントの暮らし方や自然との接し方を尊重したいと思う。
それは現実に実現できていれば家づくりの必要もないと思う。しかし都心の密集地ではそれらを100%実現することは不可能で。敷地周囲の環境にも大いに影響を受ける。また経済的な事情にも制約される。
私は郊外の戸建住宅に住んでいる。いわゆる建売住宅を購入したのだが。建築家の設計した戸建の団地の中の一つを買った。家の周囲の環境が気に入ったからである。緑が豊かで朝は小鳥のさえずりで目を覚まし、家の周囲には水路があり常に流水音が聞こえる。家の前の道路も7m以上ありと図善の車での来客にもそれほど気を遣わなくて済む。それでも暮らしていると道路を隔てた無効にリニアパークと地元では呼ばれている細長い公園があり、春には桜、新緑、秋には紅葉が見事でその景観を家から採り入れたいと思い増築した。
町全体でその街並みで、ある有名な賞をいただいているので増築には景観を壊さないように細心の注意を払った。
私の事務所は都心のはずれではあるが車や人の往来は多い。早朝出勤でゆっくり音楽を聴きながら仕事を始める毎日だが。中庭のケヤキを見れる位置に仕事場の窓があり、寒くない日は窓を開けているが、8時ぐらいになると車や機械の騒音のために窓を閉めざるを得ない。それはそれで仕方のないことだと思う。それより早朝のひんやりした空気を楽しむことができるのが喜びだ。いつもケヤキの見える机で仕事をしている。もうこのけやきとも長い付き合いになる。設計から20年以上経過している。1本のケヤキですが四季折々で姿を変え、私を楽しませてくれる。風があれば揺れ、風音がするし、秋深くなれば落ち葉が溜まるが。また設計の際には通風には気を使った。伝統的な設計手法の「二つ庭」の考えを採用した。仕事場のある中庭側とバス通りのある道路側との窓を調整することにより中庭側のひんやりした空気が流入するように目論んだがうまくいったと思う。
都心でも工夫一つで自分の暮らし方に沿い、自然との付き合い方に合う建物ができる。もちろん100%満足など実現できないのだが。
※ 家内の陶芸作品に花を添えてみました