鉄骨住宅の耐震改修
2018年10月13日[お知らせ]
木造でも木造軸組み工法による住宅の場合、耐震改修が明確でやりやすい。説明を受ける家主の方もそれなりにある程度は理解できる。また構造計算書がなくても耐震改修設計は可能だ。ところが鉄骨造のばあいはどうか。通常の手続きとしては確認申請し、確認済証をもらってさらに中間や完了検査を受けて検査済証を得るがこれらが無い場合はこんなわけにはいかない。またさらに図面なども全くない場合もある。
木造と異なり鉄骨造の場合は図面がないのは致命的であるがそれでも耐震改修は可能である。まず現状の建物の構造を調査することから始める。その過程で現状の建物を耐震改修してメリットがあるかどうかの大きな判断をするための予備調査を行う。それは現状の建物を耐震改修するのに必要なコストを概算し、想定した予算(工事をするためには工事代金に加えて引っ越して別に部屋を借りる必要になるかもしれないなど)に納まるかどうかは重要です。本格的に耐震改修をするためには各部材の寸法の調査や基礎や柱脚廻りなど
の納まりをチェックし図面化することが必要になります。それを元に構造計算をしてどの部分を補強していかねばならないかを検討していきます。
ただ予備調査の段階で建物の構造形式を把握し現状の建物がその構造形式に則ったものになっているかどうかの初歩的段階で致命的な欠陥があるものもあります。住宅クラスの小規模な鉄骨建物では道路に面した間口方向は駐車場にしたり居住空間の開口にしたりで耐震壁などは設けられないので柱と梁をがっちり組んでいわゆるラーメン構造とする場合も多いがその場合は柱と梁の取り合いをしっかり溶接して剛接合しなければなりません。それと木造軸組み工法のように耐力壁をとるブレース構造にする場合もありますがこの場合は柱と梁を溶接して剛接合にする必要はありません。また柱部材のメンバーがあまりにも小さく明らかにラーメン構造が成立しないとわかることもあります。
構造を何も理解していない工務店が木造にならって柱と梁を鉄骨にしたような住宅もたまに見かけることがあります。ラーメン構造かブレース構造の建物でもない耐震的には大きな欠陥のある住宅を見たこともあります。もちろんこのような建物は確認申請の段階で振り落とされるので当然確認申請を行わず建てられることが多いのです。
最近調査した住宅では上に述べたような実例があった。鉄骨構造の基本を理解していないので1階全面駐車スペースになっているのにラーメン工法を採用していない場合もあった。駐車場間口と垂直な方向には少なくともブレースが入らないといけないがこれもない。というのは梁と柱の接合部が剛接合ではなくボルトで接合したピン接合であったからである。さらに柱断面が外形寸法だけでも極端に小さく柱脚廻りも補強プレートもなくベース@ウレートも通常の半分の厚さしかないお粗末工事であった。構造に大きな問題があり、地震や台風などの影響を大きく受け、揺れが大きくなるので雨漏りなども発生しやすくなる。
とくに鉄骨の中古住宅を購入する場合はまず専門家に調査してもらうことをおすすめします。中古とはいえ家はやはり高い買い物になり、長期間保有していかねばならないという他の物品とは大きく異なるので慎重に行動していただきたいと思います。
最後に確認概要書のコピーがあるが確認申請の副本がない場合などは以前の計画の時に取得した概要書のコピーを添付して現状の建物の概要書だと偽る場合もあるので要注意です。
※ 写真は金井の陶芸作品他