間取りと住宅の色
2017年11月25日[ケヤキの見える窓辺]
中古住宅の調査ということで古家を見る機会が多くなっている。私の場合は自ら住宅を設計するのでやはり設計者の立場で見る。外壁の防水をシーリングに頼るものが多いので寿命の短いシーリングの改修を行わないない場合すぐに劣化してしまう。10年を過ぎる頃にはシーリングの改修を考えなければならない。外壁でいえばサイディングを使う場合は当初はきれいに見えるがジョイント部はシールに頼るのでその部分の劣化が目立つ。高性能なサイディングと短命なシールの組み合わせがまずい。確かに施工は簡単で竣工直後はきれいに見えるのだが。
バルコニーの防水も仕上げをモルタルで行う場合はシールと同じで10年もするとセメント分が抜けて砂が露出してクラックが入りやすくなってくる。合板に直接防水仕上げをする場合も見受けられるが最大の欠点は歩行感がよくないことだ。ぼこぼこと音がして不快感に襲われる。
施行しやすく早く、安いということが優先されがちな昨今の家づくりではあるが問題点も多くある。子どもの感性を育むという観点で家づくりをされていないように感じる。間取りさえ要求を満たしていればそれでいいということが優先されがちになっている。家づくりの根本は間取りではない。間取りの根本には個室がある。でも家族の生き方を考えていると個室が必ずしも優先されるものでないことがわかる。誤解のないようにここで個室とは家の中で壁と閉じることができる開口部をもっている部屋のことを指す。家族でも互いに干渉されないような空間づくりは必要だ。たとえば受験生の場合は集中して勉強できる環境は必要だ。ただし家庭内に家族と完全にシャットアウトしてしまう環境はよくない。やはり家族という絆は必要だ。
家づくりのお手伝いをする中で家族の絆というものの考え方次第で住空間が変わる。先ほど受験生の話がでたが、お互いに家族が家族のことを思いやるというのは勉強する上でも大切なことだと思う。その微妙なさじ加減は家族の置かれた環境、個性によって変化する。それが住宅の色になると思う。住宅の色が出ている家は素敵だ。そのような家が多くなれば楽しくなる。
家づくりで最も大切なところはこのあたりのことだ。間取りだけ確保できていればという話ではない。さすがに設計事務所に相談に来られる場合はこのことを本能的に理解されていることが多いと思う。住宅の色は時間と共に変わる。そこが家づくりを自らの人生を重ね合わせながら味わい深いものにすると信じる。
※ 写真は山寺と蔵王の秋風景