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一生を暮らす家づくりに騙されるな!

2015年11月20日[ケヤキの見える窓辺]

えらい物騒なタイトルで申し訳ありませんが、みなさまの家づくりのお手伝いをさせていただいている経験から意見を述べさせていただきます。

 

家というのは長期間保有する不動産なのでよく長期的な観点からの勧誘広告が多くなって消費者も惑わされて家づくりに置いて一番肝心な点が抜け落ちるのではないだろうか。

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今家選びに「省エネ」というキーワードがある。エネルギー消費を節約することは今に始まったことではない大切なことではある。現代の家づくりではこの省エネという尺度を用いて比較されるが、エネルギーを使わないことが最大の省エネであるという観点が失われているように思う。

 

省エネルギーを重視するあまり、いわゆる「省エネ」だけの家を選ばされているのではないだろうか。究極の省エネの家は窓のない家だといわれるが、省エネを重視されるあまり豊かであった伝統的な私たちの暮らし方から逸脱した家が多くなっていると思う。

 

開口部の話がでたが我が国では窓というのは古来は間戸といわれてその原型は柱と柱の間の「戸」でその使われ方は普段開いたままで使われ、雨のときだけ閉める使われ方であった。外国では窓は閉めた状態が通常で我が国とは全く違う概念であった。

 

開口部を大きくするため自然と軒や庇が深くなり我が国独特の景観を育んできた。私たちの周囲を見てみよう。ちんちくりんの軒や庇が多くなっていて、伝統的な風情と奥ゆかしさのある家が少なくなっている。それは開口部の扱い方が窓の機能性にだけ頼ったデザインになっていることもあるが、どうも窓廻りのデザインが軽視されているのが主因だと思う。我が国では窓は伝統的に開いたままが常態でそこから自由に自然と通じることができた。それを楽しむ伝統的な文化があった。

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確かに窓は壁に比べて熱損失が大きいが我が国では四季があり、比較的温暖で快適な中間期が長いのが特長である。この豊かな中間期を存分に過ごす発想が弱くなっているのではないだろうか。

 

省エネや耐久性という尺度は当然重視されるべきだと思うがもっと大切なことは単に「一生を過ごす家」ではなく、その一瞬一瞬、一日一日の暮らしを工夫し、楽しむことができる家づくりが心に置いておかねばならない重要なことだと思う。

※写真はしまなみ海道の景観

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