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窓廻りについて

2014年12月27日[ケヤキの見える窓辺]

先のブログで仕切りについて書きましたが今回は窓について考えてみます。大学時代に教えを受けたS教授の話から引用します。先生は欧米の窓と日本の伝統的な窓はその成り立ちにおいて全く異なる概念ですと力説された。英語でwindowとは「ウィンド=風」+「オウ=目」で“風の目”、“風の穴“という意味からきている。壁に開いた穴であったり、屋内で焚火した煙出しの”風穴“を意味する。一方我が国では”間戸(まど)“という意味からきていて柱と柱の間の”戸“であるという。寝殿や寺院などでみることができる「蔀戸(しとみど)」を思い出してください。「し」とは水、つまり雨を止めるための雨戸ですが、これは普段は開けっ放しにしておいて、雨の時だけ閉めます。つまり日本の”間戸“は日中開いているのが普通の状態、窓を開けるというのは明ける、即ち明るくするということなのです。閉まっているのが常態の外国の”窓“とは全く異なる概念だといえるでしょうと解説された。

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つまりわが国では日中は窓は明るくしておくのが長く常態であった。したがって雨も降っていないのに雨戸や窓シャッターで窓が閉まった状態は通常の状態ではないといえる。

 

したがって日中でも窓が雨戸や窓シャッターで閉まった家の多い街はわれわれの感覚からすれば良い街並みとは感じないだろう。

 

街に暮らすものにとって隣家が昼間から雨戸や窓シャッターで閉められていてはいい気持ちがしないだろう。窓という字には公や心が入っていて明るくするためだけではなく街の一員として住み手の心情を外部に発信する役割もあると思う。外壁と違って窓は住み手の暮らし方が外部に染み出る情報装置の一つだと私は考えている。

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雨戸や窓シャッターを防犯のために設置することが多いといわれる。しかし、都市防犯研究センターなどの資料によるとバールを使う場合、手動シャッターで18秒、電動シャッターで58秒、アルミ格子にいたっては9秒、雨戸は即時で開けられるという。まだ割るのに数分かかる防犯ガラスの方が防犯上有利な結果である。

 

われわれ日本人の感覚からすれば窓は開けられている(戸締りはしても日中雨戸や窓シャッターで閉めない)状態が通常であることを改めて再確認する必要がある。このような状態で防犯にも環境にも有効な建築上の工夫をしていくことが大切であると考える。

 

窓の背後にブラインドやカーテン、障子などは最低限のプライバシーや環境を確保するためには必要であることは否定しない。閉めるか開けるかの0か1の選択ではなくグレーゾーンを含めた多様な選択ができることが大切で、私は家づくりにおいて窓廻りの設計はとくに重要だと考えている。

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※写真は目黒の庭園美術館の照明

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