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建築のクォリティについて

2016年9月14日[ケヤキの見える窓辺]

40年近く建築設計という仕事を生業としてきたものにとって近頃感じるところがあります。それはクオリティについてです。機能性と経済性のために捨てられてきたものがあまりに多く気が付くと身の回りがどうも薄っぺらい世界になってきているのではないでしょうか?

確かに経済性は大切です。自らもお手伝いさせていただいている住宅なども経済性なくしては成り立たちません。ただその束縛の中でクォリティについてのこだわりは捨てていません。省エネ機器や太陽光発電設備などは導入できていませんが外壁や断熱性能、内部空間の構成、内部仕上げなどはこだわりをもって設計しています。施主もこの点を理解していただいて家づくりをすすめています。

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外壁も昔ながらの左官職人さんの手によるものです。もちろん大工さんによる木摺り下地にラスを取り付けています。内部空間も構造用木材は大部分プレカットを採用していますが一部どうしてもプレカットできない納まり部分がありましたので大工さんの手刻みで納めていただきました。

 

内部仕上げは壁などは予算上左官壁は採用できませんでしたが天井は梁現しでシナ合板の目透し張で構成しました。もちろん和室も同じです。自然塗装による木目を生かす仕上げです。天井にシナ合板を目透しで1枚1枚大工さんが貼っていく作業は楽ではありません。今回は塗装は作業場で済ませたものを貼ることにしています。とくに2階の天井は勾配になっていて割り付け図にしたがって取り付けていきます。

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経済面から石膏ボードにビニルクロス仕上げが早くて安くできると思います。また工業製品をただ単に貼っていくことも同様です。手間を省くこと、工業製品をそのまま取り付けることなど採用したら安く早くできるのは十分わかっていますが仕上がりが薄っぺらくなってしまいます。

 

昔の民家などもこの手間を省いていないので味がでてくるのです。

 

わが国ではクォリティに対する価値観の劣化が急速に進行しています。それに危機感をおぼえます。ヨーロッパではアルミサッシ一つとってもクォリティを大切にしています。我が国のアルミサッシは経済性を追求した結果、板厚が薄くなり、アルミサッシの仕上がりも早く押し出す方が経済的なので表面にヘアーラインのような筋ができています。モノの厚みというものは人間の目にはごまかせません。文化の先進国であるヨーロッパは何が大切で何が大切でないかという肝心なところは外さない。工業製品でも大きな違いがあるのです。

 

※この夏宿泊した情趣溢れる昔ながらの旅館

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