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図上歩き

2018年3月21日[ケヤキの見える窓辺]

私の生業は専門家の立場で住まいの実現のお手伝いをすることです。そのために図面を描いては打ち合わせさせて頂いて徐々に夢の実現へとつなげていく作業をするわけです。その図面の中をたどってその住まいの住み手となったようにいろいろ検討していきます。仮想の家の中を実際生活しているように振る舞い不具合がないか、住み手に問題となるところを事前に確認して打ち合わせを行い徐々に修正していきます。つまり机上の生活をしながら問題点を探るのです。

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ある小説家の興味ある話がありました。小説を書くための旅についてです。小説家は取材と称してよく旅に出るそうです。しかし小説を書くためには完全に一人になる必要があるそうです。現実の場所を旅しているのだがじつは小説の中に旅に出ているような感覚になるそうだ。そこに現実を持ち込む誰かと一緒に旅するわけにいかないということだ。

 

ある小説のことを考えながらある土地を歩いて、いつのまにか小説の中を歩いている気持ちになるは、えも言われぬ快感だそうだ。

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私の仕事もちょっと似ていて図面をたどることによっていつの間にかその家の中で生活しているような気持ちになっていることがある。そこで感じた不快感や不具合はそこで住まわれる家の持ち主にも同様な気持ちになるので事前に解決しておかなかればならない。そのときの判定基準が大切なのだ。たとえば階段についてお話すると最少のスペースで階段を設置しょうとすると廻り階段とするのが簡単で効率がよい。建売住宅などはこの方式の階段が多い。狭い敷地で目一杯建物の床面積を確保するとなると階段面積が重荷になる。また一方向の階段方式の場合もよく採用されている。階段を利用しようとすると部屋を通らないと上り下りできない。これも踊り場代わりに部屋を利用させて使うとそのスペースが節約できる。これは建売住宅の場合の物事の判定基準が床面積を確保することが一番の目的になり階段の機能の一面だけの検討だけで済ましている。私たちの判定基準は住み手の住み心地なので廻り階段形式では踊り場部分で大きな段差となり、足を滑らすと大きな事故につながる場合がある。踊り場部分で1m近くの段差があるので小さなお子さんや高齢者には危険である。廻りの中心付近の階段の踏み幅も15cm以下になり、健常な大人でも危ない。私たちの判定基準ではこのような危険な廻り階段方式は採用できない。一方向だけの直階段も効率がいいが一度足を滑らせると一気に階下に落下してしまうので非常に危険だ。

 

設計事務所で修業し始めて頃、所長からは「建物はまず安全でなければならない」をことあるたびに指導された。その言葉は今もわすれたことがない。

 ※ 雛祭りは過ぎましたが我が家のひな人形

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