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わが国にもある東西問題——独自の民族感情で問題化に至らない

2018年1月13日[ケヤキの見える窓辺]

先進国と言われる国で基本的社会インフラである電気の規格が異なるのは我が国だけだそうだ。ご存じのように東日本が50ヘルツ、西日本が60ヘルツの周波数です。

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この違いのルーツはどこから?それは電気を導入した際に東日本の電力会社がドイツ製の発電機、西日本がアメリカ製の発電機を導入したそうだ。その発電機が造る電気の周波数が異なったせいである。

 

その違いは社会にとって不便ではないだろうか?私も東京生活から大阪に引っ越した当時は東京で使っていた電子レンジが大阪では使えなかったりでその原因が東西の電気の規格が異なることであることを知った。現在は家電は東西両方の規格にも対応できる仕様になっているという。

 

しかし産業用の機械など設備機器はまだ対応できないらしい。東海道新幹線では使用する電気の周波数を60ヘルツに統一して、東日本地域を通る新幹線車両に自前の変電所から60ヘルツの電気を流しているという。

 

しかし大災害のときには東西どちらかで互いの電力の不足を融通し合えるシステムが必要だと思う。東西の周波数を統一すれば済むことではないかと素人は思うが実際は統一するには想像もつかないほどの巨額の費用がかかるという。そのため規格統一の話は過去にも浮上したがそのたびに立ち消えとなった。

 

こんなことを考えていると東西の違いが他の分野でもあることに気付く。私の生業の設計の分野でも東西で畳の大きさが異なり、最近ではそれが入り乱れている状態になっている。関西でも比較的お歳をめされた世代は昔からある京間、関西間に馴染んで愛着があり、住宅の広さも京間モデュールを採用する場合がある。ただ建築材料の分野では京間対応のものは少ないので材料上無駄が乗じる場合もでてきて必要以上に工事費が割高になる場合もある。若い世代はあまり気にせずに関東間でもとくに違和感を感じない人もいる。

 

またエスカレーターの列の造り方にも東西で異なる。東京では右を空けて列をつくるが大阪では逆である。こうなったのは電気と比べて歴史的に浅くルーツは1970年の大阪万博のころにさかのぼるという。動く歩道やエスカレーターで外国人観光客が戸惑わないように欧米式の左空けに下のが始まりだといわれている。通常エスカレーターの並び方も我が国では自動車の追い越し車線は右側にあり、本来右側を空けるのが通常のようにも思えるが欧米では追い越し車線は左側を空けることからそれは採用されなかったという。

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私たち日本人は古来から異なる文化を輸入しそれを独自に消化吸収して自家薬篭のものとして自らの独自の文化に発展させてきた。そういうわけで私たちは異なる文化の存在をを尊重し互いに認めあう包容力ある国家として存在してきた。力づくで統一してしまう方が確かに効率がいいはずだがあえてそうしないところも残してきたのが私たちのよさではないだろうか?

 

大事なことは「違いをなくすことではなく、違いを越えて互いに尊重し、認め合い、システムでも違いを越えて使える柔軟性あるものに育てていく心だ」と思う。この思いを維持してきたのは私たち民族の美点ではないだろうか。

※ 写真は家内の陶芸作品

 

 

 

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