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二酸化炭素は有毒ではないのになぜ空気汚染の指標に使われる?

2014年11月11日[ケヤキの見える窓辺]

地球温暖化への影響で二酸化炭素は有名である一方その濃度が空気汚染の指標に用いられたり、最近はあまり話題にされないが酸性雨の影響のさい言及されたりした。しかし、歴史的には二酸化炭素は有毒であるという説がささやかれたことがあった。

 

現在、空気のきれいさの指標として二酸化炭素濃度が用いられ、一般の場合、0.1%以下に抑えることが基準となっている。皆さんがご存知の一酸化炭素は有毒で、わが国でも毎年一酸化炭素中毒でお亡くなりになられている方がおられます。一方、空気の汚染の指標として用いられている二酸化炭素そのものの死亡事故は聞いたことがないし、有毒である断言する人もいない。ではなぜ空気汚染の指標としてもちいられているかを考えてみよう。

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最初に「炭酸ガス(二酸化炭素)有毒説」を唱えたのはいまから遡ること約150年前にドイツのペッテンコッファーだといわれている。炭酸ガスは空気中で0.1%以上になると、人間に害を与える、というようなことを言った。きれいな大気中には0.03%ぐらいの炭酸ガスはある。ところが人のはく息の中には4%の炭酸ガスが含まれている。これが部屋の中の空気をだんだん汚していくわけで、そうするとペッテンコッファーの言ったように、0.1%以上になると健康的でないとなると一大事である。

 

ところが、第二次世界大戦中、空襲があり、空から爆弾が落ちてくるので防空壕を堀り、そこに人々は避難した。「空襲警報!」というと、みんなその壕に入るわけで、空襲が止むまでそこにじっとこもるので、ペッテンコッファーの説を知っていたある人物が鉄筋コンクリート造の防空壕で炭酸ガス濃度を測ったそうだ。そうしたら、0.1%を超えていた。「おっ、超えたぞ。これは危ないかな」。1.0%を超えたが「大丈夫だ」。2%になった、10%になった。「大丈夫じゃないか」これは、炭酸ガスは有害ではない。壕内のおじいちゃんやおばあちゃんたちは元気でぴんぴんしている。これで炭酸ガスがわるいんじゃないとなって、なんか別のことが原因なのではないかということになってペッテンコッファーの炭酸ガス有害説はなくなったといわれている。

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こんどはイギリスの生理学者で、ジョン・スコット・ホールデンという人が、炭酸ガスはむしろ人間の呼吸を整えるのに非常に大事なガスなんだと言い始めたわけです。そういわれればハアハア、ハアハアすると卒倒したりけいれんしたりすることがあるが、あれは炭酸ガスを出しすぎが原因だそうである。人気歌手の前で、キーキー、キーキーやっている人たちがよく卒倒するのは炭酸ガスを出しすぎて呼吸がうまくいかなくなり、けいれん、卒倒を起こすそうである。いずれにしても炭酸ガスはそんなに悪者じゃないということが言われ始めた。

 

しかしながら、やはり空気の汚れの度合いを測りたいわけです。都合のよいことにこの炭酸ガスは、有害ガス、バクテリア、それから臭いや、湿気、そのようなものが増えてくると、炭酸ガスも同じように一緒になって増えてくるという特徴があることがわかり、また炭酸ガス濃度は比較的測定しやすいこともあって、やっぱりペッテンコッファーの言うとおり、0.1%ぐらいを限度にしようということになった。そういうことがあり現在空気の汚染の程度を測る物差しとして使われている。

※写真は秋の毘沙門堂

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